「道の駅」の小さな農業革命

平成27年8月8日 
森の駅推進協議会 代表幹事 岡本守生

現在、「道の駅」が話題になっています。

 地産地消の新鮮で自然な農産品が、購入出来るからです。
地域の自然な農産品の直売により、地域を元気にし、求める消費者を元気にする貴重な存在となっています。
例えば、一本10円か20円ぐらいで農協に収めたものが、回り回って、都会では100円近くになります。
「道の駅」では、そうした品物が、80円か70円で出ていますので、訪ねた都会の人は、大喜びです。
しかも、朝採れの新鮮さ抜群のものですから、日頃の倍ぐらいの量を買い込んでいます。
中には近所へのお土産になっていることでしょう。

 出品の農業者は、「道の駅」に売上の10%か15%の置料(場代)を支払っても、手許には65円から55円ぐらいが残りますから、農協へ出荷の10円か20円に較べ喜びもひとしおです。
手作りの自然栽培で苦労した甲斐があった、と安堵していることでしょう。

 ある程度の指導はあったにしても、かって農業者が、自分で値を付けて収穫物を、公でおおっぴらに売ったことがあったでしょうか。
日本の農業史上、初めての出来事のように思います。
消費者良し、農業者良し、地域良しの小さな農業革命が起こっていたのです。

 これは偏に、「道の駅」の周辺に建てた農産品の直売施設を応援した農林省のお蔭だ、と思っています(異論のある方もおられるでしょうが)。
また、この施設の本格的なモデルは、宮崎県綾町で、時の郷田實町長が、町あげての有機栽培を実施し、その産品の出口として、昭和63年につくられた「手づくりほんものセンタ―」にあると、推測しています。
現在の「道の駅」の発展・繁盛からは、予想も付かないと思いますが、元々、「道の駅」は道路の環境を良くする為に地域交流センターが発想し、建設省に提案致しました。
道端に散乱するゴミを防ぐ為に、駐車場を備えた広場を確保し、ゴミの分別収集籠の設置、トイレの設置、簡単な通信設備(公衆電話)等の設置、運転者の休憩所の設置等の提案です。
毎日のような道路の清掃費用の積み重ねと、ゴミの散乱防止のこうした恒常施設の設置費用との比較を含め、山口県と岐阜県で社会実験を繰り返し、本格的な設置になりました。

 また、地域の方々と、3日間夜通し話し合うトコトン討論会などを開催し、駅の周囲に、どの様な施設があったら良いか等に就いても話し合いました。
自論多発で、郵便局、老人施設、診療所、農協の出張所等の半ば公的な施設が主な候補だったように思います。
その中で、「鉄道に駅があるように、道にも駅があってもいいよネ」(山口県の船方農場の坂本多旦かずあき様)との発言があり、「道の駅」のネーミングの元になった、と聞いております。

 このところ、ふるさと創生が姦しく、地味な地域創生に取組んできました地域交流センターはこのところくすんでおりますが、6月に全国「道の駅」連絡会の本田敏秋会長から、
「「道の駅」がここまで発展して参りましたのも、貴殿(田中氏)をはじめ「道の駅」の制度創設当時に携わられた皆様方のご尽力の賜物であり、改めて御礼申し上げる次第です」(最後の部分)とのメッセージを戴き、予期せぬ礼節を尽くしたお言葉に関係者一同涙の出る思いを致しました。
苦節20余年と言うのでしょうか、人生の記念碑になりそうです。