「日本の森を元気にすると日本の国と地球が元気になる」
森の駅発 元気木の家研究会 会員 2015年 4月 16日
株式会社 増 田 林 業 代表取締役 増 田 治 郎
日本国内には豊富な森林資源があり、木の年輪1つが年間成長量、国内の総成長量は国内で消費される全ての木材消費量を賄えるほどの、日本は世界有数の森林国です。
しかし有り余るほどの良質な木材が身近にありながら、住宅に使用する木材の多くは北欧等国外から船で化石燃料のCO2を大量に排出し輸入しています。
内にあるのに外に買い求める、この不合理が「住宅用木材」に生じています。
それらの総輸入量は日本の木材全使用量の70パーセントにもなりますが、残念なことに告知不足により多くの方が少資源国日本のイメージからか、鉄、アルミ等鉱物や石油、ガスと同じ様に、木材も不足により輸入され、外国産木材も使用しなければならないと思われています。
住宅に使用する木材は基本的に使用する地域の気候特性に合った木材が好ましく、日本の場合国産樹種のなかで、湿度が高い気候風土の中、長い経験を経て適材として主にスギ・ヒノキ・が多く使用されてきました。
日本のスギは日本固有の樹種であり、ヒノキも国外種とは根本的に材質も特性も違います。
急峻な湿度の高い国土により良材が育つスギやヒノキと違い、外国産材は日本の湿度の高い気候に対する適合性や材質の優劣より安価である事を前提として商社が色々な国より輸入しますので、価格的には輸入材の方が国産材より一般的に安価となります。
グローバル社会での日本、今まさにTPP問題が取りざたされていますが、木材はいち早く昭和39年に木材自由化となりました。
そうした状況のなか価格面で国産材の利用が減少し、日本の地方社会の基盤産業であつた林業の衰退が始まり、林業就労人口の減少は山林荒廃、日本の里山衰退や限界集落増大、不要であるダム建設問題等へと連鎖し、今日多くの国民が心痛める国内の大きな社会問題ともなっています。
グローバル社会での日本の立ち位置より、諸物の輸出入の自由化は避けては通れない問題とは思いますが、身近に有るのに利用せず外から買い入れ、多くの問題を生み出すは、輸出入を担う商社のモラルも問われますが、消費に対し消費者のより賢い意識の持ち方が大切な時代であると思います。
利用されず、手入れのされない日本の森は、そのまま放っておくと密生により、やがてCO2の取り込み酸素供給の光合成作用が鈍り、CO2減少の恩恵がなくなるのみならず、地表に太陽光が届かなくなり下草も育たず、森の保水作用の低下は山崩れ、水害に及び影響は河川・海洋へと連鎖し、CO2増大と共に災害問題や環境問題ともなっていきます。
CO2増大による地球温暖化問題は人間社会がつくり出した大問題であり、CO2削減に向け早急に各国が解決に取り組まなければならず、
すでに海面上昇・豪雨、干ばつ、台風の巨大化等の災害を引き起こし多くの災いの元凶といわれ、各国共通の地球的環境問題です。
CO2削減は各国がその排出を極力抑え、それぞれの国が排出量に見合った削減計画を実質的に行う事が解決に向け大切です。
日本の国民としてこれらの問題を解決改善する方法があります。
その解決改善策は、少資源国といわれる日本において、荒廃は進むが「自給出来る程豊富な日本の森林を大いに利用する」だけです。
このことを日本のみならず世界に対して「日本の場合、身近にある木材を利用することで木材の輸送距離を大幅に短縮しCO2減少につながる点と、日本の多くの森を利用していないことによる、CO2吸収機能の低下を前面に出す事で、貿易品目の差別では無い事を世界に理解して頂く」点をアピールし理解を求め、根回ししていく事がグローバル社会での国産材利用のポイントです。
地球温暖化対策として大気中のCO2減少が不可欠と言われています。
多くの方が御存じの通り、植物である木は光合成により、大気中のCO2の取り込みと酸素の供給作用をしてくれます。
その作用は木の成長期がより活発で、その意味からも森林は絶えず活性化することが大切で、森の活性化とは「森の木を育て、伐採利用し、また植林する」事です。
「森を大切に守るには木を伐ってはいけない」の風潮はまだまだ一般的でありますが計画的に利用することこそが大切です。
「日本の森を利用する」具体的方法は「日本の木で家を造る」事です。
日本の豊富な木材資源ではありますが伐り出すだけではいずれ枯渇してしまい新たな植林、手入れ等管理が必要です、
木を利用すれば森に仕事が生まれ、人を必要とし、人里が形成され、、地域社会の街が発展し森のみならず、日本そして地球が元気になります。
日本の森は持続可能な資源となり人々にその恵みを提供し続けてくれます。
日本の森で育つ木を住宅に利用するだけで多くの問題が解決に繋がります。
国産材を利用して頂くには生産者も無駄があれば排除し、より良い品質向上につとめ価格面等も含め利用し易い環境を整える努力が求められます。
国産材を利用した家の建築主は国産材の使用増大により、多くの国民が心痛める多くの問題解決しCO2削減に貢献して頂けます。
こうした背景より国は国産材利用の建築主に、木材利用ポイント制度を2013年度に農林資産省管轄の林野庁により施行しました。
この取り組みは諸問題解決に貢献する国産材利用の施主を補助し、本来国産材の利用を促すことを目的とした今までに無い制度で、木材流通も含めたシステム構築等関係者の努力も含め、今後の展開にもよりますが評価出来る取り組みです。
しかし、いまひとつ制度が一般社会に浸透せず、制度半ばよりシステムの隙間に各方面からの圧力の為か外国産材も含められ、本来の制度の目的が骨抜きになってしまったことは残念ですが、改善し続ける事が大切です。ここでこうした制度を止めては、日本に政治家と行政、学会、木材界に人材無しに等しく、各省庁、業界の枠を超えた国と地球的な大問題の解決につながりません。
なぜ骨抜きに至ったかを検証すれば、その理由があり改善すれば良いからです。
まずは国民の賛意を得る、現状の告知、改善の手段と提言、目標の提唱です。
日本は世界有数の森林国であるが有効に利用されていない功罪、森を利用することで多くの問題が解決改善される効果、地球的環境改善に繋がる新たな木材利用ポイント制度推進、森は計画的に利用することで、無尽蔵な地球的資源としても大切である事等を、子供たちの教育も含め一般の方への正しい理解への告知努力も必要です。
実務的には利用する国産材が適正に管理された森から産出された木材である適合証明として、我が国独自の木材合法性制度を構築し、取り入れた事は産地証明や数量確認等利用者の安心を得られる意味からも評価できます。
しかし世界的に知名度の高いFSC等海外合法性認証も制度に入れましたが、先進国のこの認証は主に発展途上国等の狩猟型民族社会における違法伐採・盗木問題にあります。
あまりに農耕型民族の土着性の強い、国内の林業実情とはかけ離れた問題での海外の認証制度ですが、ブランドイメージが良い理由で高額な認証料と繁雑な手間を海外機関に費やすが実情、違法伐採で問題の多いチーク、ローズ材等「家具用材種」まで制度に入れ海外認証制度も取り入れた為に、海外認証を受けた住宅用木材の「外国産材も制度に含む」一因となり、木材ポイント制度の意味合いが薄れる結果となったことは残念です。
日本の住宅に利用する国産材は主にスギ・ヒノキの日本固有的樹種で違いは明確に識別出来、適切管理は材質で判断出来、違法伐採や盗木ではない証明は日本の森林実情より殆ど意味が無く、日本独自の合法木材制度の構築により産地と数量確認が目的のシステムで十分だと思います。
改善点はありますが、合法木材制度構築は運用次第でエンドユーザーとの将来に大きな力になると携わられた方に敬意を表します。
グローバル社会の中での日本の責任としては「世界の問題である地球温暖化」に対し、「身近にある木材を利用することで木材の輸送距離を大幅に短縮しCO2削減につながる点」と、「日本の森を利用しないとCO2吸収機能が低下してしまう事」が、世界に対してCO2削減に一番効果的方法であり、国産材の利用により「日本の森を元気にすると日本の国と地球が元気になる」
このことを国民と世界に向かって発信し前面に出していくことが大切です。