メルマガ186

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森の駅発メルマガ No.186 2025 二月 February
February はローマ神話の月の神Februus(ヤヌス)の祭が起源。派生語のfebruareは祓いや清めの意味です。

目 次 🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲 🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲

・2025年の横顔
・山小屋通信 Part 103 「カヤの大木」大森 明 
・新連載「ワインへの誘い」吉田 健一
・美術コラム「名所江戸百景・深川洲崎十万坪」戸田 吉彦

2025年の横顔 🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲

 2025年が始まり1ヶ月、アメリカ合衆国第47代大統領就任式のように昨年から注目され、
すでに過ぎた出来事もあります。また今年の日本では20年ぶりに国際博覧会が開かれますが、
阪神淡路大震災から30年、戦後80年、様々な節目を迎えます。予定されている事案に加えて、
かねてから警告された未来予測は果たしてどうなのか?検証の意味で注目したいと思います。

1月 1 日 能登半島地震(2024年)から1年
1月 17 日 阪神淡路大震災(1995年)から30年 第五次神戸市基本計画(2015年発表)終了
1月 20 日 アメリカ合衆国第47代大統領就任式
1月 24 日 通常国会召集予定「来年度予算案」
2月 16 日 気候変動に関する国際連合枠組条約「京都議定書」発効(2005年)から20年
3月 11 日 東日本大震災と福島原子力発電所事故(2011年)から14年
3月 22 日 NHKラジオ放送開始(国内初の放送開始)から100年
4月 13 日 日本国際博覧会(大阪・関西万博)20年ぶり(2005 愛・地球博)開幕(10月13日閉幕)
6月 未定 G7(第51回先進国首脳会議)カナダ・カナナスキスで開催予定
7月 22 日 東京都議任期満了
7月 28 日 参院議員(25年改選)任期満了 
8月 6-9日 広島・長崎に原爆投下(1945年)から80年
8月 15 日 終戦から80年(戦後80年)
9月 8 日 日本を含む各地で皆既月食が観察される
9月 13 日 東京の国立競技場で第20回世界陸上選手権大会開催。21日まで。
9月 22 日 プラザ合意(G5財務大臣・中央銀行総裁会議が発表した日本の対米貿易黒字削減合)40年
10月 1 日 第22回 国勢調査実施
11月 1 日 山手線環状運転開始から100年
11月10日 COP30(国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議)ブラジル・ベレンで開催予定
12月 1 日 従来の健康保険証が全て期限切れ

その他 世界の水の消費量が1995年の1.2倍(2080.5km3)(国際食糧政策研究所2006年発表)
 全員が安全な水や清潔なトイレを利用する世界(2007アジア・太平洋水サミット宣言)
 経済発展の水枯渇と地球温暖化で世界人口1/3が安全な水の不足(2008年国連警告)
 世界人口の2/3が日常の水に不便を感じる「水ストレス」の懸念(2009年国連予測)
 世界18億人の1人年間使用可能水量500t以下の「絶対的水不足」(2009年国連予測)
 世界の取水量 5235km3(2000年比30%増・経産省水ビジネス国際展開研究会2010年報告)
 世界人口 79億人以上、イスラム教徒25%(国連世界人口白書、英国ブリタニカ年鑑推計)

山小屋通信 PART103 🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲 🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲


「 カヤの大木」大森 明(森の駅発メルマガ編集・発行)

高勝寺という古刹(東京都稲城市)にカヤの大木があると聞き、冬晴れの日に訪れた。
現地は緑が多く残る環境で、目指すカヤの大木はお寺の本堂裏手に枝を広げて堂々と立っていた。
お寺入口の掲示板によると、このカヤの木は雌株で、樹高25m、幹周り6.5m。
東京の久品仏にあるカヤの木に次いで、都内で2番目の高さだという(東京都指定天然記念物)。

過去の落雷の影響で幹が途中で3つに分かれているが、なかなかの高さだ。
青い葉を茂らせた太い枝と中央の太い幹が重厚な古木の雰囲気を醸し出している。
手元の植物図鑑などの情報だが、カヤの木は日本特産の常緑樹で、
実を食用だけでなく油を採取して灯火や料理に利用してきたという。

お寺のホームページでも、
このカヤの木には秋にアーモンド状の実がなり、実から珍味な食用油が取れる、とあった。
「珍味」となるとがぜん実や油を試食したくなるが、現在は保護のために樹が柵で囲われており、
実を確認できる距離まで近づくことができない。
実や油を試食するには別のカヤの木を探すしかないと今回は断念した。

このカヤの木を見上げながらの勝手な妄想だが、かつては実から採取した油がお寺の灯火や人々
の料理に活用される等、この木が長年にわたり地域の人々の生活に密着して現在に至ったのかも
しれないと思った。

新連載🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲 🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲


ネイヴェ村セッラ・カペッリのブドウ畑(筆者撮影 2018年イタリアワイナリー巡り)

「ワインへの誘い (第1回) 」吉田健一(元ろうきん森の学校 運営メンバー)

 ワインブームと言われて久しいものです。最も長く続いているイベントにボジョレーヌーヴォー
があります。ボジョレー・ヌーヴォーとは、フランスのブルゴーニュ、ボジョレー地区で、その年
に収穫した「ガメイ種」というブドウで造ったワインを指します。最大の魅力は何と言っても、
収穫したてのブドウで造るワインの、フレッシュさを楽しめるのが一番の魅力だと思います。
11月の第三木曜日に解禁となり、日本でも身近なものになりました。一方、ワイン検定試験 (注1)
合格のためのワインスクールが隆盛、ワインは勉強するものとの風潮が強くなった気がします。

(注1) ワイン検定試験 世界で通用する最難関のワイン資格に WSET(Wine & Spirit Education Trust)があります。
WSETはロンドンに本部を置く世界最大のワイン教育機関で、「WSET認定試験」は国際的に認められた試験です。
試験レベルは最も難易度の低い「WSET Level1」から最も難易度の高い「WSET Level4 Diploma」までの、4段階に
分かれています。

 ワインは難解なものではなく、ちょっとした知識と感性があれば楽しめ、人生の幅を広げます。
最近は、ほとんどの工程を一人で行う、小規模生産者が増えています。そういうワインを飲むと、
生産者の個性や、ワインに対する思い、感情が伝わり、それを「芸術」と呼んだりする私たちは、
ワインは単なる飲料の域を超え、「その領域」に達しつつあると感じています。

 そのための観点を、今回は<テロワール> を取り上げてお話ししたく思います。 

ワインの個性を決める <テロワール>
 テロワール(terroir)は、もともと「土地」を意味するフランス語 terreから派生した言葉で、
ワイン、コーヒー、茶などの品種における、生育地の地理、地勢、気候による特徴を指す語です。
同じ地域の農地は、土壌、気候、地形、農業技術が共通するため、作物にその土地特有の性格を
与えます。


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 テロワールの例に、「ボルドー地方」を取り上げます。ボルドー地方の広大なブドウ畑は、ジロ
ンド川、ガロンヌ川、ドルドーニュ川沿岸の緩やかな斜面にあります。ひとつの生産者が、広大な
面積に点在するブドウ畑を所有する場合も多く、畑ごとの A.O.C(注2) は存在せず、最小単位の
A.O.Cは、村名までです。上記3河川のうち、ジロンド川の左岸地域は、比較的温暖な海洋性気候
で、砂利が多く水はけの良い土壌から、カベルネ・ソーヴィニョンを主体とした、長期熟成タイプ
の赤ワインが作られます。ジロンド川はさらに大きく2つの地区に分け、最下流地区が「メドック」、
上流地区が「オー・メドック」です。

(注2)AOC フランスの伝統的なワイン産地は、使う葡萄品種や栽培方法、醸造方法等にそれぞれ固有のスタイルが
あり、そのような産地の個性を守るための法的な規制が、AOCです。1935年にフランスで制定されました。

オー・メドック地区(61シャトー)
 オー・メドックは格付けシャトーが集中するエリアです。「ポイヤック村」、「マルゴー村」、
「サン・テステフ村」、「サンジュリアン村」などの有名なコミューンがあり、それぞれ村名の
A.O.Cを名乗ることができます。シャトーとは、主にフランスのボルドー地方において、ブドウ畑
を所有し、栽培、醸造、瓶詰までを手掛ける生産者を指し、ボルドーの「シャトー」とブルゴーニュ
地方トーに特有です。自身で畑を持たず、農家からブドウを買い付けてワイン醸造を行う生産者
はネゴシアンと呼ばれます。
「ポイヤック村」「シャトー・ラフィット・ロスチャイルド」と「ムートン・ロスチャイルド」
小粒の砂利の混ざった土壌からは、タンニン豊富な超熟タイプのワインが生まれます。
5大シャトーのうち3シャトーが集中するエリアです。

「マルゴー村」「シャトー・マルゴー」、「シャトー・パルメ」等
砂利や粘土質の土壌からは繊細でふくよかなワインが生まれます。

「サン・テステフ村」「シャトー・コスデストゥルネル」、「シャトー・モンローズ」等
表土は軽いが、下層は粘土質と石灰質の土壌で、豊かなストラクチャのワインを生みます。

「サン・ジュリアン村」「レオヴィル・ラス・カーズ」「レオヴィル・ポワフェレ」等
大きな石が混じった粘土質や石灰質の土壌から、柔らかなワインを含んだワインが生まれます。

上記以外のオー・メドックのコミューン
「ムーリ」や「リストラック・メドック」は、他のオー・メドックの産地とは異なり、川から
少し離れた位置にあり、砂利や粘土の小丘の土壌からはやわらかな印象のワインが作られます。

「ムーリ」「シャトー・シャス・スプリン」
ジロンド川の川岸から離れ、マルゴーとサン・ジュリアンの間の奥まった西の土地に位置します。
広さ630ヘクタールのこの地区は、メドックの中でも地質的に独特です。
ブドウ栽培に最適な下層土壌は、太古の地殻変動によってドーム状に持ち上げられ、
その後の浸食と堆積作用によって石灰と粘土と砂利で構成された丸い頂きとなりました。

「リストラック・メドック」
リストラックとはフランス語で「周辺」を意味する言葉で、このAOC名はメドックの周辺という
位置を示した名前です。ムーリとほぼ同質の地形と土壌の上にあり、栽培ブドウの品種も栽培方法
も同じです。ブドウ栽培に最適な下層土壌は、太古の地殻変動によってドーム状に持ち上げられ、
その後の浸食と堆積作用によって石灰と粘土と砂利で構成された丸い頂きとなりました。
一方この地殻変動の反動で、川岸寄りには優良な畑がありません。

 次回はボルドー右岸をテーマにする予定です。

美術コラム 🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲 🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲🌲


歌川広重「名所江戸百景・深川洲崎十万坪」1857 アムステルダム国立美術館蔵 Pablic domain

広重「名所江戸百景・深川洲崎十万坪」戸田 吉彦

 昨年からご紹介の揃物「名所江戸百景」は、「東海道五十三次」で名声を確立した 歌川広重
(1797-1860)晩年の代表作で多くの傑作を収録します。描き終え刊行を待たずに逝去しますが、
江戸の景色の膨大な数は、名所絵を美人画と並ぶ浮世絵一大分野にした広重が、渾身の想いを
込めたように感じられます。今もなお熱心なコレクターやファンが絶えない所以でしょう。

 当時の江戸の姿が分かる「名所江戸百景」は、広重が江戸の復活を願って描いた説もあります。
それは制作期の1856~58年に各地で大地震(1854-59)が起き、安政2年(1855)は江戸も被災、
大名屋敷内の重臣が圧死するほど建物は倒壊、30ヶ所以上で火災が発生、目抜き通りの商家が、
ひと月後も崩れた姿という旅人の記録も残ります。以前の江戸の姿は震災前から描き続けて来た、
広重以外には確かに成し得なかった一大事業です。

「名所江戸百景」の中でひときわ目立つ「謎」の絵

『深川洲崎十万坪』(107景)は、昨年12月紹介の「深川木場」(106景)に続く深川の雪景色です。
亨保8年(1723)から新田目的に埋め立てますが、鋳銭場(いせんば・寛永通宝など銅の銭座)が置かれ
後に松平薩摩守所領地、寛永8年(1796)は一橋家所領地が出来ます。日の出が美しく、洲崎弁天
(現州崎神社)、ざる蕎麦発祥の店や茶屋等も並びます。しかし絵にそれらしき景色はありません。

 むしろ深川は、江戸成立に材木で貢献、木置場の為の広大な埋立地に始まる昔を思い出します。
「深川洲崎十万坪」は、現在、東京都現代美術館がある木場公園の隣、江東区石島、千田、千石、
海辺町の一帯です。十万坪は33万㎡と、東京ディズニーシー(49万㎡)より小規模ですが、洲崎と
呼ぶ地は南へ広がり、区史は、主に東京メトロ東西線の北が江戸時代、南がそれ以降の埋立地、
広い砂浜は初日の出や潮干狩りで賑わうと述べ、現町名の東陽町はその名残りです。『深川洲崎
十万坪』が描かれた幕末は埋め立ててから130年、名前が示す広さや伝わる名所としての景色と、
荒涼としたこの絵との間に幾つか違いがあっても、不思議ではない時の流れがあります。

 この絵が表す広さと奥行き感は鳥瞰図の効果です。定火消の子に生まれ火の見櫓から江戸を見て
きた広重には心得た視点の描写です。飛行機がない時代に海の上から見た景色は想像に頼らざるを
得ませんが、現代から見ても自然な広重の絵は、幼児から培って来た視覚体験の賜物でしょう。
浮世絵の材瞰図は北斎の東海道絵地図もあり、長崎経由の洋書に銅版画の鳥瞰図が載りますから
既に日本に定着した遠近表現ですが、さらに遡れば源氏物語の絵巻物や洛中洛外図屏風は上から
見下ろす視点で描いた絵です。俯瞰する絵画表現自体が、日本人に親しみ易い構図と言えます。

 では一度見たら忘れられないこの絵の強さは、どこから来ているのでしょう。一つ確かな事は
海上遙か高い、鳥の視点は作為的という事です。写生的表現の荒涼の雪原、夜の海岸、漂う木桶、
北風吹き荒ぶ冠雪の筑波山と、弧を描き翼を広げる大鷲を、鳥瞰図と近接拡大でまとめたのです。
童話やアニメでお馴染みの鳥に乗るファンタジックな空想と同じです。またドーム型装飾は西洋で
よくありますが、半円を上に戴く縦長構図は、後にアール・ヌーヴォーのポスターに頻出します。

その一方、映画「頭上の敵機」(米国映画「Twelve O’clock High」邦題)を思い出す方もいるでしょう。
上から襲われる恐怖をよく表す題名で、空中戦の登場と共に、想像が具体的になったと思います。
しかしこの時代に、上から睨む鳥が左右幅一杯に翼を広げたデザイン的構図を何処で得たのかと
不思議に思いましたが、花札に桐の鳳凰札があります。竪版の上に翼を広げる図は珍しく浮世絵と
大きさは違いますが、構図は寸法と無関係です。花札に限らず、その事について詳しくなくても、
イメージだけが記憶に残ることがよくあります。昔の絵師も現代の映像作家も同じはずです。

 絵札遊びの花札はカルタが変化したそうで、桐札には古代中国の鳳凰降臨伝説が使われます。
鳳凰は初め札の様々な位置に描かれますが、江戸中期に今の図柄に統一されます*1 。現代美術の
アンディ・ウォーホルが広告、ロイ・リキテンシュタインがコミックからヒントを得た様に仮に、
広重が遊戯用の札からきっかけを得たとすれば、時代を超え距離が縮む親近感を覚えます。

 そして不安に刺激され、海に漂う桶の中には何かがあるはずだという怖い話がよく登場します。
死者を入れた棺桶説、鷲は生きている獲物しか狙わぬとの反論説、四谷怪談の戸板を暗示する等
面白がるように止まる所を知りませんがここは現在住宅街、想像とは言え住民は迷惑でしょう。
桶が漂う理由を広重が明らかにしない以上、なぜ広重が「深川洲崎十万坪」に託して不安を描い
たのか、当時の歴史を見れば桶より不安な事ばかりですから、判断は読者に委ねたく思います。

 浮世絵は彫師と摺師が仕事をする以前に、絵を描く絵師が画想を練ります。少なくとも数ヶ月、
さらに前から考える場合もあります。そしてこの時期、江戸の天下を不安に陥れた事件と言えば、
黒船来航(1853)と、安政江戸地震(1855)です。どちらも深川洲崎と関わりがあります。

嘉永6年(1853)黒船来航 泰平の眠りを覚ます上喜撰たった四杯で夜も寝られず(川柳・老中間部詮勝)*2

 嘉永6年7月8日、ペリー提督率いる米国軍艦4隻が、長く鎖国を続ける日本に、開国を求めて

浦賀沖に停泊、同時に各艦の武装短艇を着水させて測量隊を編成、浦賀湊内を測量し始めます。
7月11日はさらに川の流砂で海底浅い江戸湾に、軍艦入港のため水深深い澪筋(みおすじ)を測量。
江戸最大の千石船(150t)の16倍もある米国軍艦(2,450t)が、江戸湾深く入る様子を見た幕府は
恐怖を覚え、浦賀奉行与力を黒船へ派遣。来日理由は米国の中国貿易船や捕鯨船の補給のために
開港を促す大統領親書を持参と分かり、受取ろうとするも、親書に相応しい役人を要求。江戸に
上陸、直接将軍に会うも辞さずと譲らず。老中阿部正弘が久里浜回航を命じ、浦賀奉行が親書を
受け取り返事は将軍の病を理由に1年間保留、帰国させます。それから幕府は急遽浦賀造船所で
洋式帆船「鳳凰丸」を起工、同時にオランダへ近代艦を発注。2年前米国から帰国し土佐藩校で
教えるジョン万次郎を旗本格で招き米国事情を調査。長く諸藩に禁じてきた近代化を奨励。

幻に終わった江戸湾防衛の砲台場計画

 また同時に、品川~深川州崎に11ヶ所砲台場を計画。建設を鋼鉄製大砲を国産化した江川英龍
に命じます。今のお台場跡です。ペリー退去10日後に12代将軍家慶が病没。異国排斥の攘夷論が
高まるも、病弱の13代将軍家定は執政せず、開国要求に悩む老中阿部正弘は、幕閣の外に意見を
求め幕府の威厳は日々失墜。そこへ半年早く1854年2月13日ペリーは軍艦を7隻に増強し再来。
幕府は慌て横浜で饗応、3月31日に日米和親条約締結、6月17日下田条約締結、米国の外交勝利
に終わり、江戸湾砲台も深川洲崎等が半分以上中止となり跡地は放置。250年続く武士の面目を
失いました。真夏とは言え御家人広重の心は筑波颪(おろし)が吹く冬の空だったろう思います。
「深川洲崎十万坪」の何も無い風景は、砲台建設に賑やかな店を片付け放置された姿にも見え、
眼光鋭く狙う大鷲と波に漂う桶の対比は、右往左往した幕府への嘆きか開国日本への警鐘か。

安政2年(1855)江戸地震、震源は深川沖 天災は忘れた頃にやって来る(寺田寅彦)

 開国翌年は安政2年10月2日(1855.11.11)午後10時頃、大地震が江戸を襲来。多数の記録から
推定規模M(マグニチュード)7クラス。2024年1月1日能登大地震(M7.6)2011年3月11日東北大
震災(M7.9)規模です。丸の内、麹町、本所、深川が震度6強、日本橋、銀座、霞ヶ関、永田町が
震度5。大名屋敷116邸で死者、親藩・譜代大名屋敷や奉行・評定所が集中する丸の内は全家屋が
被災。旗本・御家人8割被災。町人密集地の麹町は死者4,741人。寺社・武家屋敷含めた全死者数
1万人以上。倒壊家屋1万4千戸以上。火災範囲1.5k㎡、小雨のため翌午前に鎮火。幕府は初日から
情報収集、翌日から市中を取締り治安維持。無料埋葬で遺体からの感染防止、生存者へ米配給。
公定上限価格設定で物価抑制、物資の調達を確保、災害義捐金に報奨で必要経費の捻出を配慮等
迅速な対策を打ち出しました。江戸時代は地震と火事が多く、繰り返し被災した経験の賜物です。
震源地の地図上の位置(震央)は北緯35.65°東経139.8°、現在の東京メトロ木場駅と、りんかい線
国際展示場の中間地点*3 。深川洲崎に近いのは偶然とは言え、この絵の鳥が飛ぶ下に震源がある
ことになり、桶は被災漁船の遺物の可能性もあります。この近くの夢の島公園にある第五福竜丸
(1954年3月4日ビキニ環礁で米国水爆実験に遭い被爆)を、子供の頃に見学した事を思い出しました*4 。
筑波颪(つくばおろし・冬の空っ風)と防風林・防風垣

 筑波颪は関東冬の空っ風です。西高東低冬型気圧配置の時、シベリア風が日本海の湿気を吸い、
日本の山の日本海側を昇る時に冷えて雨や雪、太平洋側へ降りる時は乾燥します。前橋から東京・
千葉へ吹く平均風速10m/秒以上の北西風は3月まで続く赤城おろし・榛名おろし・浅間おろし・
筑波おろし等、どれも同じ冬の関東山麓の強い季節風、関東平野の空っ風です。

 この対策に昔から住宅の周囲に防風林(風垣、屋敷林、屋敷森と呼ぶ)をカシ、スギ、ケヤキ・
タケ等で、防風垣(生垣)をマサキ・イヌツゲ・チャ等で作り、防風以外にも防暑、防寒、防砂、
防音、プライバシーの保護など環境を整え、枯れ枝を燃料、落ち葉を肥料、成木は家屋の資材にと
日常生活に必要な資材に役立てました。元禄7年(1694)に川越藩主となった柳沢吉保は三富の地
に新田開発する際に防風林の植樹を命じた様に、政策として行われたことも多々ありました。*5

参考資料
*1. 日本かるた文化館 https://japanplayingcardmuseum.com/edo-showa-dentou-hanafuda/
*2. 東大和デジタルアーカイブ https://higashiyamatoarchive.net/ajimalibrary/01
*3. 安政江戸地震震央グーグルマップ https://www.google.com/maps/place/35
°39'00.0%22N+139°48'00.0%22E/@35.65,139.8,13z/data=!4m4!3m3!8m2!3d35.65!4d139.8!5m1!1e4?
hl=ja&entry=ttu&g_ep=EgoyMDI1MDExNS4wIKXMDSoASAFQAw%3D%3D
*4 https://ja.wikipedia.org/wiki/東京都立第五福竜丸展示館
*5 https://www.maff.go.jp/kanto/nouson/sekkei/kokuei/hokuso/shizen/01_1.html 関東農政局 他

参考文献:小林忠監修 浮世絵「名所江戸百景」復刻物語

 欧州で遠近法と共に発達した構図法は、海外の美術学校始めバウハウスの流れを汲む米国の写真
学校でも教えます。西洋美術と共に本邦に紹介、無縁と思われた日本美術も、画家や美学者達が、
洋画同様の幾何学的分析図から、構図の普遍性を解き明かす本を筆者も昔から数冊持っています。
有難い事に本コラムの分析も面白いと感想を頂き、意を強くしご紹介を重ねている次第です。
今月の「深川洲崎十万坪」も見事な広重の構図です。以下の考察がご参考になれば幸いです。


歌川広重「名所江戸百景・深川洲崎十万坪」構図解析。縦横3等分 (青線/3分割構図) をさらに、縦2等分、横3等分した
正方形の格子は、昨年12月に掲載した「深川木場」と全く同じで、この絵に載せると寸分狂わずにピタリと合います。
しかし、鳥が首を伸ばす角度、降下の動きが感じられる翼の角度、桶の位置、以上を定める対角線はこの絵の特徴です。

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