補助金が縛る日本の林業

日本では補助金をもらうためには、行政のマニュアル通りにしなければなりません。創意工夫の余地が少ないことが、日本の林業が変わらない理由のひとつです。

また日本では税金を公正に使うという理由のもと、現場を行政の言う通りに動かし、規制・管理監督するために使っているように見えます。それに対しオーストリアでは、山林所有者が共同体となって申請しないと補助金を付与しないとか、近隣の林業を手伝って報酬を得てもそれには課税しないとか、地域社会の自立・育成のために補助金を使っています。

間伐を行う場合でも、水源管理や土木工事だけのためだったり、ひどい場合は花粉対策のみの目的で補助金を活用した間伐が行われ、切り取られた材はそれ以上のお金をかけられないため、その場に放置されるようになりました。いわゆる切り捨て間伐が増えています。また、都会中心の考え方により都会の都合で切捨てを行い、その材からの価値と利用を見出そうとするものは非常に少なくなってしまいました。
切捨て間伐で、木を切り倒す向きを指示している事業があり、指示通の向きに伐採されているか県職員が一日がかりで検査に来て、指示通りでないと言われてやり直した話とか、急傾斜地であるにかかわらず、高性能林業機械で山に入るように作業方法が定められていて、それに従わないと補助金が得られないとかといった話があります。

そもそも成功して名を馳せるような地域は行政の関与が薄く、現場からの創意工夫にあふれるところであり、補助金で身動きが取れなくなっている森林組合ではありません。

オーストリアとのもうひとつの違いは、補助内容を基本的に決めているのが、日本の場合には国ですが、オーストリアでは州政府だということです。そして補助内容を決める場に補助金をもらう側も参加します。不都合が生じないようにするためには監査を行っています。行政マンも現場の人として仕事をしているという大きな違いがあります。