国産材の価格は低いまま

2007年前後から、多くの大手住宅メーカーが国産材にシフトしてきています。大きな理由はロシア材を中心に外材が日本に入りにくくなっていること、国内のスギ丸太や製材品の価格が安く、大手製材工場の供給力が高まってきたことです。

また互換性をもった板を、無垢の需要があればそれを間柱に、集成材のニーズが出てきたらラミナにして積層するといった、弾力的な生産体制も可能となりつつあります。
スギ丸太はホワイトウッドと異なり、芯材と辺材の含水率がまったく異なり、人工乾燥の技術が難しい、性質に応じた製材方法が求められるといった問題点がありましたが、それも徐々に解決されつつあります。

ただし合板や集成材の旺盛な需要が国産材シフトの主な理由で、無垢の柱の需要は少ないままです。役物といわれる上級材の価格が高かったのは1980年までなのです。
今後太く成長したスギがますます増えていくことになりますが、太く成長したスギはむしろ価格が下がる傾向にあります。太く成長したスギの価格が高くなるためには、無垢の柱の需要が高まることが必要なのです。

国産材の利用が高まっているとはいえ、丸太(特にスギ)は今でも供給過多の状況にあるため、価格がなかなか上がりません。供給過多となっている最大の理由は市場原理と無関係に山側の論理で行われる国有林の伐採と民有林の補助事業による間伐です。京都議定書の目標達成のための森林整備という名のもとに行われる間伐が、拍車をかけています。
次の理由は丸太の価格が安く、再造林のコストが出ないからということで、いわばあきらめの私有財産処分として、再造林を放棄した皆伐が増加していることです。

現政権は林業専用道の整備を急速に進めようとしていますが、高性能林業機械の効率的活用により原木の伐採・搬出経費を引き下げること、山側の都合ではなくマーケットのニーズに対応した伐採を行うようにすること、丸太の乾燥コストを削減すること、生産地に近い製材工場で住宅メーカーや工務店の求めるプレカットを行うことで中間流通のロスを無くすといった努力が欠かせません。利益の見込めない産業が発展することはありえないのです。

植林+育林の再造林コストを差し引いても十分な利益が出る林業経営が行われるためには、国産の無垢材の需要拡大と生産・流通コストの削減が並行して行われる必要があります。