外資が日本の森を買っている

1999年に1万4千ヘクタールだった取引面積が2008年には3万2千ヘクタールと倍増しています。しかし誰がいつ、どういう人に土地を売ったかという話はすべて個人情報なので、都道府県は一切公表していません。

世界的な水事情の深刻さを増しています。水不足の深刻な国で暮らす人は世界で5億人に達しています。また日本における水のペットボトル消費量は約250万キロリットルですが、中国では約1000万キロリットルに達します。そういう中、豊富でおいしい日本の水資源に外国資本が目をつけるのは当然想定できることです。

山を売りたい所有者に密かに接触して契約を結ぶようですが、売る方も情報を隠したがるし、日本人名義のダミーを使って登記されれば外国資本の購入だと発覚しません。森林総合研究所育種センター所長の平野秀樹氏は「ここ10年間、土地の売買などなかった地域で、里山より奥山の購入を持ちかけてきたケースは噂を含め、全国で十数件に及ぶ」と語っています。

日本では農地であれば、地域の農業委員会に報告し、許可を得ることが必要ですが、森林の場合には売買後に市町村を経由して知事に届出を行うこととされています。それさえ十分に把握されていないのが実情です。いったん所有してしまえば、温泉や井戸を掘るのも、地下水を汲み上げるのも事実上、全くの自由です。

平野氏は林地を売買する際の市場をオープンにするための制度作りを推進し、大切な森林については国や地方公共団体による公有化を推進すべきと主張しています。東京都では奥多摩に広がる4千ヘクタールの水源林の所有者たちを対象に、希望すれば都が林地を買い上げる方針を打ち出しました。不在地主対策を進めるとともに、それと併せて森林を手放さなくて済むだけの生活環境の創造が欠かせません。