=なぜ日本の建築寿命は欧米の半分以下なの? その衝撃の真実とは=
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100年以上の歴史のある材木屋さん
増田林業の増田治郎社長にお話を伺うシリーズの最終回です。
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衝撃の真実!
1300年も長持ちする神社仏閣が残っている傍らで
現代日本の建物寿命は30年以下と統計資料は示しています。
それは、何と欧米の住宅の半分以下の寿命数値だといいます。
いったいそれはなぜなのでしょう。
森と人を元気にする研究活動を推進する「森の駅推進協議会」の建築部会、
「元気木の家研究会」のリーダー的存在でもある、
増田治郎社長さんから、その衝撃の真実をお聞きいたしました。
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増田社長:
50年程前より住宅展示場ができ日本の家の造り手として最新技術を
売り物にした量産メーカーと、気候の異なる国の木材を使用した、
枠組み壁工法(ツーバイフォー工法)が出現したのが、問題の始まりです。
多くの施主は、大手のハウスメーカーの宣伝を信用されると思いますが、
じつは、下記のような住宅短命化につながる問題が起きています。
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量産メーカーは造り手の都合が優先された工法と材料で、
新製品を次々と発表し、メーカーごとの専用部材で、
自動車と同じ感覚で生産されている家では、
家としては短期の15年程で専用部材は廃番となります。
永く快適に住み継ぐには必須の経年による家族構成の変化に対応した
間取改修や部品交換が出来ないなどの問題が起こっているのです。
また、メーカー都合の材料で造られた調湿性のない構造体は、
宣伝の為か気密数値追求志向と共に屋内で発生する水蒸気による
結露、カビ、家ダニなど、健康問題に発展する住み心地ストレスを生み出し、
いずれも住宅短命化につながる問題を現在に至るまで引きずっています。
木材は、世界有数の森林国である国内に国産材が豊富にあるにもかかわらず、
日本の気候特徴である湿度に弱く、さらにシロアリ耐性がない寒冷地の
外国産材が、現在は住宅材料の主流となっています。
また、日本の在来木組み木造と違い間取変更に不向きで、構造変更改修を
ほとんどしない、住み替え文化であるアメリカなど、乾燥地域で発達した
ツーバイフォー工法は合板貼りで手早く簡単なことから
高度成長期の住宅不足の時代に良とされ、
国の輸出入政策で導入輸入され今日にいったっています。
行政は地震の無い国で発達した、ツーバイフォー工法の合板貼りパネル壁の
「外力対抗数値」と「密閉性」のみに囚われ、合板貼りで固める方向性を指向、
高温多湿気候での構造体自身の機能する通気工夫は忘れ去られています。
しかも、頻発する地震に大切な柔軟に外力を逃がす「柔軟免震性」の点では、
建物を固めるパネル工法はじつは外力が集中し、一気破壊の危険と
耐力釘の浮き緩みにより、頻発する地震には弱いのです。
この事はEディフェンス等の実物大耐震実験データーも示しています。
五重の塔や超高層ビル、スカイツリー等が柔軟免震性であるのに比べると
低層建物については、行政は建物を固める方向性で、
木造軸組み住宅も例外ではなく
合理化工法としてパネル貼りを奨励し今日に至っています。
しかし命に関わる倒壊の仕方と復旧費用増大にかかわる大きな問題です。
また構造壁内部の結露によるカビ,腐朽問題も招いています。
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構造体に使用される合板等の接着材も問題があり
石油系素材が多いため、他の素材に比べて素材劣化が比較的早く、
結露水にさらされた場合は、なお短くなる性質がありますが、
造り手都合で大量に今も使用されているのが現状です。
基本構造体が劣化の早い材料では100年住宅は夢となってしまいます。
そのような素材は、新たな問題としてシックハウス症候群を引き起こし、
住人の健康を害しています。
健康を害するはいい家の定義からは大きく外れ、あってはならないことです。
残念なことに、木造軸組み工法の構造材も貼り合せた集成木材が、
量産目的の造り手都合で個人住宅でも主流になっています。
行政も、省エネルギーを奨励しながら、個人住宅にも
「室内科学物質汚染空気入れ替えを強制する24時間換気の義務づけ」や
材料の「化学物質の使用数値表示義務」のみの対応は、場当たり的で、
住宅の安全に対する、使用禁止の根本解決に無っていないのが現実です。
近年の住宅短命化対策として長期優良住宅なる指針を行政は示していますが、
残念ながら接着剤耐力に頼り、建物を固める基本姿勢は変わってはおらず、
接着層により「湿気の抜けにくい合板貼り耐力壁の外に透湿シート」は、
「ウエットスーツにゴアテックス着用」に似て、通気層の機能はほとんどなく、
さらに、素材劣化の早いビニール製防湿シートで室内水蒸気の壁内移動を
止めるなどといったやり方は、人の寿命に見合った、住宅の
長期優良化を叫ぶにはお粗末過ぎる対策だと思われます。
行政は、地震に対して担当部署の違いなのか、
低層建物に対しては、固める方向性を進めてきましたが、
日本の気候風土に合った住宅政策として
以下の3点を総括として提言させていただきたいと思います。
1 超高層ビルや五重の塔の免震性を見習い、柔軟に外力を逃がす方向性
2 耐久性に影響する日本の気候特徴である湿度に即した工法、
3 土着性社会習慣での戸建て住宅における経年による生活変化に対応した
改修しやすい家の部材研究を含めた建築方法の指針
住宅短命化を止め、地震に対し「しなやかな強さ」による安全の為
以上のように、根本的に改めるべきではないでしょうか。
増田治郎社長
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人の健康と家の寿命の問題点は、
同じところから派生していきているようです。
改めて、日本住宅産業界の変革と消費者の意識革命が
問題解決の鍵を握っていることを感じ入ります。