①森の達人に聞く森林の現状 最終回
森林学者・桜井尚武氏(森の駅推進協議会副代表)
私が若かった頃と
今の森の現場で大きく違うことのひとつに
山仕事の少し長い休憩時間によく焚き火をしたことが挙げられます。
周囲の材料で暖を取ることができ
炎を眺めて談笑するのもよかった。
そして、火を扱う技術を体得できたということもありました。
しかし、今では、防火意識が向上し、
山で火をたくことが許されなくなり、しなくなりました。
結果として、火を扱う技術の継承が出来ず、
まさかの時に火を使えない人間を産出しているように思います。
そもそも山にマッチやライターを持って行かなくなってしまいました。
山で火を使う人が減ったはずなのに、山火事は相変わらず起きています、困ったものです。
これには、よく考えずに表面を観て付和雷同する世相になったことも影響しているし、
その理由としては
一億総中流意識を形成した経済的、物質的な豊かさ感によって
自然の中で自らの手作り感覚を楽しんだり、学んだりすることが大事なのだという経験がなくなってしまったことに拠るのだと思います。
もちろん携帯コンロの軽量化・高性能化で簡単に火が扱えるようになったことも一役買っています。
また、1950年代までは、奥地深山はともかく、
里山、農用林は子供達の遊び場、探検の場でした。
そこで子ども時代に自然の有様の概要を身につけられ、
火の扱いは安全にすべく、学校や家庭で厳しく躾けられたものです。
しかし、今では、樹林地は日常の遊び場に使われなくなり、
田舎、山里の子供も都会と同じように過ごすようになっています。
一次産業の重労働、低生産性から都会の賃労働に逃れてきた世代が親になり、
子どもたちに、かつての文化・技術を伝えなくなり
伝える環境が身の回りから遠ざかってしまいました。
小さな怪我、事故も回避する余り
山野への立ち入りを制限し、忌避するようになり
学校や文化施設で学ぶことが勉強だとの認識が広まり
自然の中で自然から直接学ぶことが軽視されているようです。
これらを推進したのも教育の高度化の帰結と思います。
IT技術の進歩とIT産業の発展が空想世界を拡げて
若者のみならず、多くの人を自然から遠ざけている。
つくられた社会で幻想上の生活を送るように仕組まれている
そんな現代社会になっていると思います。
=桜井先生のお話しは、現場の一コマ一コマから現代の真実の課題を炙り出しているように思われました。森林の現状とは、現代社会の現状を映す鏡にもなっていました。=
②市民フォーラムのご案内 残席わずか! です。
=本物の国産木材と歴史的木造建築物の素晴らしさを知る=
東京大学大学院准教授の藤田香織先生に
歴史的な木造建造物の伝統構法の良さや
国産木材の良さについてお話をうかがいます。
藤田先生のご専門は、木質構造の耐震、伝統構法。
建築学会奨励賞等を受賞され
古建築に集結した伝統的な技の継承についても心配りをされています。
また、国産材使用を促進する雑誌の編集に当たられています。
香りのある本物の木材を暮らしに生かして
森も人も元気になる毎日を!
国産の木材を使えば、森の手入れも進んで土砂崩れを防ぎ、
CO2を固定するので地球温暖化防止にも貢献します。
今回は、早めに多くのお申し込みをいただきまして有難うございました。
ほぼ満席となりましたが、座席のレイアウトを工夫して増席いたしました!
◆日時:11月27日(木曜日)18:30-21:00
◆場所:「ベニーレ・ベニーレ」(澁谷区神宮前四丁目31-10 YMスクエアー5F)
◆講師:藤田香織先生(東京大学大学院工学系研究科 建築学専攻 准教授 博士)
◆話題:「国内木材資源の活用」―歴史的な木造建築に学ぶ
◆会費:3000円(軽食付き)