森の7つの働き

(1) 森は命の生産工場 ~ 森と生物多様性
森には、いろいろな動植物が生息しています。
クマ、シカ、サル、リス、ネズミなどの哺乳類。
カケス、シジュウカラなどの鳥類。
多くの昆虫類、ミミズ。
それに、トビムシ、ササラダニ、線虫など微小で目に付かないもの。
川の中に生息する生き物などを入れると、多種多様で、また膨大な数に上ります。
節足動物だけでも、温帯の森林の落ち葉層や土壌中1平方メートルには、一万から百万もの数がいるといわれています。
森は多くの生き物に餌と棲みかを与える場所です。落ち葉や木の実が多くの生き物の餌になり、餌を食む動物がそのほかの動物の餌になったりしています。
また、森は生物を進化させる場所です。たとえば、裸子植物から被子植物へ植物が進化するにつれて、生き物も進化してきました。
生物がもっとも豊かな森は、熱帯林。温帯では照葉樹林です。
また、間伐などの手入れが行き届き、風通しのよい針葉樹林にも多くの生き物が棲んでいます。
森は生物資源、遺伝子資源の宝庫です。現在、世界中で使われている医薬品の25%以上は熱帯林の植物から得られたもので、各種の抗生物質や治療薬などは、森林に生息する植物や小動物、土壌中の微生物などを原材料にして作られてきました。

(2) 森は最大で最高性能の浄水・整水器 
森に降った雨は、樹冠(樹木の最上部)に受けとめられ、そのまま蒸発して大気に戻ったり、地表に達して、森の腐葉土に染み込んだりします。染み込んだ雨は、植物に吸い上げられ、葉から蒸散されて大気に戻ったり、地面に染み込んで地下水になったり川に流れ込んだりします。
森の落ち葉で出来た腐葉土は、雨をろ過し、多くのミネラル分を供給します。森は最大で最高性能の浄水・整水器とも言えます。
そうやって森から生まれた水は、地下水や川の水になって、森から海に広範囲に生息している多くの生物を育みます。
また、森からのミネラルを含んだ水(フルボ酸鉄)は、海のプランクトンを育て、プランクトンを食べる生き物を育てて豊かな漁場を作り上げます。昔から、魚付林のように、漁師が森を大切にする意味はそのような理由がありました。
森は遠く離れた海の命まで育む、生物多様性の出発点でもあったのです。

以上のことから、森を大切にすると、水をきれいにし、多くの命を育んでくれるので、私たちの暮らしの安全と豊かさに直結します。

(3) 森は世界最強のダム
急な斜面の多い日本では、雨水は短時間のうちに地中に浸透したり、河川に流入するため、河川の水が急増したり、雨水を水資源として貯めることができません。しかし、森林の地中は、樹木の根が複雑に入りこんだり、無数の小さな穴があるので、そこにたくさんの水を貯め込むことができます。無数の小さな穴は、ミミズなどの生物が作っています。
大雨が降っても、健康な森のあるところは、川の水が増水せず、また、「緑のダムと呼ばれるように、雨水を貯めて豊富な水資源を供給してくれます。
人工的に作ったダムは、土砂が溜まってすぐに機能不全に陥ったり、機能できる期間は限られていますが、森のダムは、永続可能でしかも作る費用もかかりません。
健康な森がなくなったら、私たちはすぐに水不足に陥ります。

(4) 森は最大で最高性能の空気清浄機 ~ 大気保全機能 森は、二酸化炭素を吸って光合成をして、酸素を供給してくれます。
→ これは地球温暖化の進行を抑制してくれます。
また、人間のように酸素を必要とする生物にとって森の出す酸素は命の源です。
樹木の種類によっては、比較的公害に強い木もあり、大気汚染物質を吸着してくれる働きもあります。
健康な森がなくなったら、空気が悪くなります。

(5) 土砂流出防止機能健康な森では、落ち葉や低木層(背の低い樹木の群落)が地表を覆っています。
そのため、大雨が降っても、落下する雨粒が地表をえぐって表土を侵食することはほとんどありません。
森林は土壌の流失を防いてくれます。

(6) 土砂崩壊防止機能急な斜面が多く、脆弱な地質が特徴的な山地では、ある一定以上の雨が地中に浸透すると地盤が軟弱になり、土砂崩れを起こりやすくなります。
健康な森林では、ダム機能で水をしっかりとどめてくれますので、雨水の土壌への浸透を調節して地盤の軟弱化を緩和してくれます。
健康な森がなくなると、土砂崩れが頻繁に起こります(すでに健康な森が減り、土砂崩れが頻繁に起こってくるようになりました)。
このように、森には大切な防災機能もあります。

(7) 森は癒しの場     
森林から放出されるフィトンチッド、マイナスイオンなどによる癒し効果が注目されています。
森林にいるときは都会にいるときに比べて、ストレスホルモンのコルチゾールが低下したり、血圧が低下したり、リラックス時に高まる副交感神経が昂進するなどの実験データもあります。
また、森林浴は、抗ガンタンパク質を増加させることも分かってきました。
このように、森は、私たちの心身を癒してくれます。森は、癒しという大切なパワースポットです。
詳細は、 森林セラピーポータルサイト へ (森林セラピー基地全国ネットワーク会議) 森の健康度は私たちの健康度。健康な森は私たちを健康にしてくれます。

以上のように、7つの働きとして森の大切さを考えてみました。

このほかに、森には防火効果(火災の延焼阻止の効果)や防音効果、また、景観や文化を創造するという価値もあります。
特に、防火効果は阪神・淡路大震災の時にも確認されています。
森の効果は計り知れないですね。
森林の値段は、毎年75兆円このように大切な森林に値段を付けるとしたら、いくらぐらいになるのでしょうか?
7つの働きの効果をダムの維持費などに比べるなどして計算してみると、少なく見積もっても、森は毎年75兆円の働きをしてくれているそうです。
計り知れない価値から考えると、恐らく、その数倍の値段にアップするでしょう。